2019年12月に中国の武漢市で発生したと考えられている新型コロナウイルスですが、既に一年が経過しました。
現在、感染者数は世界で7800万人を超え、死者は175万人近くに上り、日本での感染者数は20万人を超え、死者は3000人を超えています。
当初私は対岸の火事と高を括っていました。また、2009年に世界的に流行したインフルエンザPandemic 2009H1N1程度?と、そんなスタンスであったことを記憶しています。
とは言え未知のウイルス。2020年1月には院内に対策会議が立ち上がりました。
その頃はまだ国内ではダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入港した時期で、院内でもさほど危機意識も無く、スタッフの中でも温度差があったかと思います。
しかし、今後の方針が話し合われる中で、徐々にこのウイルスの感染拡大のスピードや未知の臨床像、ワクチンや治療薬がないことなどから最悪のシナリオも想定しておかなければならないと感じていました。
にわかに騒がしくなったのは、やはり北海道冬の大規模イベントでした。
今思えば現在盛んに言われている、ソーシャルディスタンス、3密回避という対策が当時から重要だったことが伺えます。
新型コロナウイルス対応の事業継続計画(Business continuity planning,:BCP)やマニュアル、発熱外来など受け入れ施設の整備や職員の健康や労務管理など、それらをいくら整えても資源やキャパシティーには限りがあり、一度爆発的に流行が起こると安全な医療提供が出来なくなります。資源が乏しい地方は特に、ある瞬間から起こります。そこで、地域の方々への正しい感染対策や初動対応の啓発が極めて重要と考えました。
幸いにも当地域では、2009年に起こった新型インフルエンザ流行の教訓から、地域でつながる当感染対策ネットワーク(YIC-Net)があり、それを活かし連携加盟施設と共有しつつ、4月には地域の住民へ向けYouTubeによる啓発を企画スタートさせ、これまで8回配信しています。斯くして当院で何人かのYouTuberが誕生したわけですが、その際プレーヤーとしても、消毒、手指・環境衛生用品の正しい知識と題し私の方からも配信させて頂きました。視聴していただけましたでしょうか?
昨今“情報もウイルスも同じ”とあらためて感じることがあります。情報もウイルスのように変化します。
既にご存知の通り、飛沫・接触感染の新型コロナウイルス対策は、石鹸でしっかり手洗いや70%程度のアルコールによる手指衛生、不織布マスクでのユニバーサルマスキング、咳エチケットなどが基本ですが、そこへ他人との接触を断つソーシャルディスタンスが加わり、エアロゾル感染の可能性という概念で3密回避という対策が生まれ、報道等でこれらがメインで盛んに叫ばれるようになりました。
そういったこともあり、現在の報道ではなぜか手指衛生が抜けていることがあるのをお気づきでしょうか?こういった情報の変化にも注視して頂きたいところです。
また、以前よりいつでもどこでもPCR検査で安心したいとよく言われます。最近、民間のコンビニエンス的な検査機関が増えています。国からもこれについての留意事項として事務連絡の発出がありましたが、それらの中には検査の精度管理もせず、結果を本人にのみに送って終了であとは自己判断で!という機関もあります。また、あくまでもPCR検査などの結果は写真のスナップショットと一緒、その時点の結果であり、1時間後には感染するかもしれないことを認識して頂きたいと思います
さて、これまで、不足していた手指消毒剤やマスクなどの防護服の確保、各種マニュアルの加筆修正、未承認・特例承認薬の手配やその臨床研究への参加、対策や治療に関わる文献検索による情報提供、医師と治療方針の協議や服薬支援 などを行ってきました。
とにかくあっという間の一年でした。
2月に横浜で開催された日本環境感染学会へ出席したまさにその時、横浜港にはダイヤモンド・プリンセス号が停泊し、その中でDMAT他の同志が活躍しているのを眺めていたことが遠い昔のことのように感じています。
とにかく、この新型コロナウイルス。間近で見ていて、怖いウイルスです。もちろん私は罹りたくありません。
現行の治療薬に関しても未だ効果的な薬はないです。
しかし、少しの光明はあります。
今印象が良い治療としては、重症化する前から、抗ウイルス薬とステロイドの投与での効果が見て取れますし、米、英で始まったワクチンも今後期待できます。
でもやはり大事なのは、“うつらないこと”です。
以前より、当ブログでも再三申し上げていますが、是非とも
◎しっかりとした正しい情報を捉えてください。
◎“うつらない”“うつさない”行動をとってください。
◎やばい!と思ったらすぐ決められた機関に相談してください。
◎やはり基本で一番大事な、こまめな手指衛生と適正なマスク装着を引き続きお願いします。
これらに関しては、例年のインフルエンザ対策と一緒ですよね。
まだまだ自分にできることはあるのか?日々自問自答、奮闘の毎日ですが、医師や看護師がフルPPEで患者様に寄り添い、ウイルスに立ち向かう姿や、差別や偏見の中で激務をこなしていることを身近で見ていると、それを支えるには、同じ仲間として何ができるかを考え後方支援を続けて行こうと思っています。
年末も迫ってきましたが、未だ先の見えない長期戦の様相です。自分自身もこのウイルスに勝とうとは思っていません。せめて負けないように頑張ります。
皆様に置かれましても何卒新型コロナウイルスに負けないようにご自愛ください。
くる年は、今より状況が良い方向に向かっていることを切望し祈念致します。
少し早いですが、皆様、良いお年を!
YIC-Net 広報 薬剤師 崎本