吉田です。今回は小児科領域での発熱についてお話します。
1. 小児の発熱
外来で患者さんのお母さんより『平熱より高い!』とか『この子の平熱は低い』との訴えをよく聞きます。
健康な人間の体温は1日の中でも上がったり、下がったりしています。一般的には朝方から昼にかけて低く、午後から夕方にかけて高くなります。
私見ですが37.5℃以下の体温は発熱とは考えません。もちろん、解熱薬の使用は必要ありません。
2. 熱が出たらどうするか
発熱には2つのコースがあります。
前半のコースは体が体温を上げねばならないとその準備を始めた時。このとき体は血管を収縮させ、体からの余計な放熱を防ごうとします。こうなると手足は冷たく、顔色は悪くなります。もっと熱が必要な時は筋肉を震わせることにより熱を作り出そうとします。これがいわゆる『悪寒』です。このようなときに体を冷やすのは得策ではありません。暖かくしてあげてください。
後半のコースは熱が十分上がりきった時。体は目的とする体温まで上昇したことが確認できると今度はその熱を外に発散しようとします。前のコースとは逆に血管を拡張させたり、汗をかかせたりします。このときは顔や体は赤みが増し、手足はポカポカしてきます。今度は衣服を薄着にしたり、体等を冷やしてください。
おじいちゃん、おばあちゃんが『汗をかかせるために包め、包め!』という場合がありますが、後半のコースに入った場合、これは逆効果です。やめましょう。特に小さい子ではひきつけのリスクを上げることになりますから。
3. 解熱剤の使用について
解熱剤は体温をいわゆる平熱まで下げるのが目的ではありません。熱で子供がつらい状況に置かれた時、それを少し楽にしてあげるのが解熱剤の使用目的です。熱も治療のうち(熱でバイキンと戦っているんです)ですから、むやみと熱を下げることは治療の足を引っ張ることとなります。
とはいえ、わが子の熱の状況が様子を見ていいものかどうかの判断は難しいものです。このときは遠慮なく病院を受診し、相談してください。
インフルエンザによる発熱の場合、解熱剤の使用には注意が必要です。
1) インフルエンザ脳炎・脳症を発症した患者において、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸の使用群は、解熱剤未使用群と比較してわずかながら有意に死亡率が高いと報告された。
2) 日本小児科学会では、平成12年11月、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンが適切であり、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである旨の見解を公表した。(平成13年5月厚生労働省)
これをかいつまんで言えば、インフルエンザの流行の可能性がある時期にはボルタレンやポンタールなどの非ステロイド系消炎剤は使うな、アンヒバやコカールはつかっていいよ、ということです。
当然のことながら総合病院小児科はこれを順守しています。このことはインフルエンザのみならず水ぼうそうなどでも当てはまることですから、うちでは年中、アンヒバかコカールということです。大人の解熱剤やわけのわからぬ解熱剤を使うことは決していいことではありません。ご注意を! ご相談ください薬 崎本
4. 十分な水分補給を!
熱を下げるためには十分な水分が必要です。汗をかくことは非常に重要ですし、熱いおしっこをたくさん出すことも解熱に役立ちます。当YICブログに当院薬剤師がいい内容を記載しています。ORS、いいですね!うまく利用してください。
点滴も確かに水分補給の助けになりますが、効果は一時的です。これで『熱が下がる』というのは幻想です。
だって、点滴の中身はさきほどのORSをちょっと複雑にしただけのもので、何も入っていない点滴の中身は単に塩水にちょっと毛の生えたようなものですから。
文章に起こすとちょっと舌足らずの印象があり、誤解を招いたようであればごめんなさい(いいわけですが、短い文章で盛りだくさんの内容を正確に伝達するのは非常に難しいのです)。
皆さんの希望があれば、こういった内容で医療講演などしたほうがいいかも?と考えている吉田でした。多少なりとも参考になればと願っています。