ダニと感染症~SFTSウイルスについて~
カテゴリー:お役立ち~その他の感染症~ 2013年5月30日
新聞報道等でご存じの方も多いと思いますが、ダニが媒介するウイルスによる感染症「重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)」の患者が日本国内でも報告されるようになりました。

SFTSは、主として2011年に初めて特定された新しいウイルス、「SFTSウイルス」を保有するマダニに咬まれることで感染・発症します。(中国では、感染患者の血液や体液を介したヒト-ヒト感染事例も報告されているようですので、接触予防策の遵守が重要です)


マダニは、固い外皮で覆われた比較的大型(吸血前で3~4mm)のダニで、主に森林や草地などの屋外に生息し、市街地周辺でもみられます。また、このダニの生息地域は広くアジアやオセアニアに分布しますが、日本でも全国的に分布していて約40種類以上存在し、そのうちウイルスを持っていると疑われているのは「フタトゲチマダニ」と「オウシマダニ」の2種類です。

 フタトゲチマダニ.JPG
   (写真:厚生労働省ホームページより引用)


ちなみに、日本国内で今まで患者が報告された県は、長崎県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、佐賀県、宮崎県であり、北海道での報告例は今のところありませんが、今回患者が発生した地域が他の地域と比べて特に危険であるということではなく、先に述べたとおりマダニは全国に分布しているので、各地どこにおいても発生する可能性があります。


症状は、感染すると6日~14日の潜伏期間を経て、原因不明の発熱(38度以上)や消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛など)が中心です。時に、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、昏睡、けいれん)、リンパ節腫脹、出血症状(紫斑、下血)などを起こし、重症化して死亡するケースもあります。


検査所見の特徴は、血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少、電解質異常(低ナトリウム血症、低カルシウム血症)酵素異常(AST、ALT、LD、CK高値)、尿検査異常(蛋白尿、血尿)などの所見がみられます。
死亡率は10~30%程度といわれています。現在SFTSウイルスに対する治療薬やワクチンはないので点滴などの対症療法が主体といわれています。


この感染症にかからないためには予防が重要となります。マダニの活動は春から秋にかけて活発化するので、ダニの生息している野山や草むらに入らないことが最善ですが、もし入る場合には注意が必要です。なお、ポイントは以下の通りです。

1.肌が露出しないような服(長袖長ズボン、足を完全に覆う靴)を着用する。

2.ダニが比較的付きにくいナイロン製の衣服にする。

3.野山では草の上に直接座らない。


もしダニに咬まれているのを見つけたら、無理に引き抜いたりせずに、できるだけ病院で処置してもらいましょう(皮膚内にマダニの一部が残存し、ウイルスが入り込むことがあるため)。
また、ダニに咬まれた後に発熱などの症状がある場合には、速やかに病院を受診して下さい。

みんな気をつけて欲しいダニ。
YIC­Net 佐藤
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