こんにちは。回復期病棟担当の作業療法士の池田です。
作業療法室には調理のリハビリを行うためのキッチンがあります。そこを使った調理練習の様子をご紹介したいと思います。
右足に麻痺があり目が見えにくいAさんはもともと調理師さんでした。大きなレストランで忙しく働いていましたが、4か月の長い入院期間となりました。「できればあと2年は働きたいな」という思いがありながらも「目が見えにくくなったから多分無理かな」「長く立っているのは無理じゃないかな」という言葉が聞かれました。職場では一度に大きなフライパンで十人前のチャーハンを作ったりと多忙だっただけに「今の自分でできるのか」という思いは当然のことと思います。そこで、調理訓練でも練習でもなく、ご本人に今どのくらいできるのか感じていただくことを目的にチャーハン作りを行うことにしました。
リハビリで調理を行う場合は、必ず事前に材料や道具を患者様本人に決めてもらいます。調理は工程をイメージする事もとても大事なことです。料理人のAさんはどんな食材を使うのかと思いきや、至ってシンプル、ネギに卵にナルト、ベーコンです。なるほど。緑に黄色にピンク!シンプルかつ完璧な色合い。そして私が用意したチャーハンに適さない柔らかご飯もあっという間にパラパラに!まるで魔法です。
「池田さん、チャーハンの決め手はね、火の強さとそれに合った鍋の大きさ、そして鍋に対するご飯の量なんだよ。」
私はすかさずメモを取ります。OT室を漂ういい香りにつられるように来たのは担当PT。もちろん調理の際のAさんの立位姿勢などをみにきたわけですが、「味見してごらん」とAさん。「わー美味しい!!」気づくとAさんの調理練習は主婦である私達が生徒のお料理教室になっていました。
Aさんの感想は「立っていられたね。調味料の量が見えにくいけど・・・できたね」といい表情でした。これから仕事復帰にはまだ道のりがありますが、「お店の味」しましたよ!